Lucas, 舞台芸術創作奨励特別賞についてのご報告 ;

平成12年度(第23回)文化庁舞台芸術創作奨励特別賞について贈賞理由と選考経過が発表されました。


≪舞台芸術創作奨励特別賞 贈賞理由≫ (文化庁報道発表より)

 思わせぶりな会話の片鱗をいくらつなぎ合わせても、なかなか相互の関係が見えてこないもどかしさに、観客はまずひきこまれるだろう。だんだん焦点が合ってきて、関係が見えてくると、観客は、実はこのドラマの真の主人公は、巨大な温室の植物群だったことを恐怖とともに知るのである。最後まで見えてこないのは題名の意味するところで、湯村の長台詞でスタイルが一貫しなくなるのとともに、この秀作の瑕瑾とする意見もあった。

≪舞台芸術創作奨励賞選考経過≫ (文化庁資料より/文・石澤秀二氏)

 本年の応募数は男性61作品、女性30作品の計91作品。30〜40代の人たちを主体に、81歳の男性から14歳の少女に至る幅広い年齢層の応募があり、一昨年の96作品に次ぐ、応募数である。
 選考は、恒例にしたがい、予備選考を通過した25作品を選考委員がグループ別に手分けして慎重な審査の結果、次の11作品を第1次選考通過作品とした。選考整理番号順に列記すると下記のとおりである。
 「星の合間に眠るもの」「だはん−川島雄三の魂」「桜よ、桜。」「食卓のない家」「冬鳥」「あめのむらくものつるぎ(天叢雲剣)」「シークレット〜無限荘のおかしな人々〜」「White Phase」「時の砂粒」「湯葉と文鎮−芥川竜之介小伝」「リビングリーム」の11作品。
 そして一堂に会した選考委員によって、各作品の丁寧な論評が展開され、順位をつけない投票により「だはん−川島雄三の魂」「食卓のない家」「冬鳥」「White Phase」「湯葉と文鎮−芥川竜之介小伝」の5作品を第2次選考作品とした。
 さらに一層、熱のこもった論議が展開され、「White Phase」を全員一致で特別賞に選んだ。また、佳作3作以内の内示を受けて、佳作該当作品の選考に移り、「冬鳥」と「湯葉と文鎮−芥川竜之介小伝」が先ず選ばれた。
 ここで「食卓のない家」が円地文子原作の脚色であることが改めて議論された。<優れた創作>を奨励する趣旨からすれば、脚色劇はなじまないとの意見もあったが、原作の優れた今日性を巧みにすくい上げた優れたドラマとして高く評価され、映画監督川島雄三を描き、荒削りの魅力はあるが、破綻もある「だはん 川島雄三の魂」のレベルより上位に置く意見が大勢を占めた。
 こうして惜しくも「だはん−川島雄三の魂」は入賞を逸したのである。

なお選考は石澤秀二氏、酒井洋子氏、清水邦夫氏、西川信廣氏、ふじたあさや氏の5名により行われました。

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